新幹線を、のぞみを、特別から日常へと変えた新幹線は静かに最後を迎えた。
2020年3月8日、のぞみ315号は最後の700系新幹線ののぞみ号となるはずでした。新型肺炎の影響で苦渋の判断があったとはいえ、結果的に時刻表に掲載された列車としての運行は2月28日ののぞみ406号新大阪発東京行が最後となりました。
偶然にも、その日のぞみ406号に乗車できましたのでご紹介します。(※実際には3月の団臨で1往復した列車もありますが、時刻表掲載列車としてのラストランとして本記事では紹介します。)
新大阪駅は既にたくさんの人でにぎわっていました。まさか、この日が700系のラストランになるとは思いも知らず。ただ、上りラストランではありましたので、この23番線にもカメラマンは多かったです。
そして入線してきた700系に多くのシャッターが向けられます。
9号車のグリーン車に乗車しました。700系の装飾と、方向幕に出迎えられました。
700系のグリーン車には初めて乗車しました。重厚なシートに体を預け、名古屋あたりから小田原付近までの記憶はありません。それにしても、全体に力強く走っている印象でした。N700A系のような軽快さではなく・・・。車内では記念のクリアファイルなどの販売もあり、特別な列車感も相応にありました。また各駅では撮影者も多かったのですが、車内は驚くほどに空いていました。
到着した東京駅では皆さん撮影タイムに。
今回の700系の装飾デザイン、後ろの部分は試験車両の300Xをデザインしているのでは、と思っています。300Xから生まれた700系、その雰囲気を十分に感じさせるデザインです。
東京駅では、このバックのオフィスビルが印象的です。やはり新幹線は、ビジネスに重要ですから、700系もビジネスパーソンを支えたのでしょう。
そして静かに、700系は去っていきました。
700系はデビューこそ華々しく、Ambitious JAPANの旗印の下でそれまでのひかり中心ダイヤからのぞみ中心ダイヤに変更、自由席も設定されてまさにのぞみを身近な存在にした、そんな新幹線だったと思います。
一方で、700系の独特のフロント形状は、「カモノハシ」と呼ばれましたが、それは決してかっこいい、という意味ではなく、特に先代の100系、300系、JR西日本の500系に比べてやはりデザイン的にはいまいち、という印象がぬぐえませんでした。それは、空力や物理学の見地からは正しいのかもしれませんが、決してかっこいいとは思えなかったのも事実です。
一方で、先のAmbitious JAPANも、車内チャイムがの楽曲が変更になったのも、700系の功績です。2000年にはシンデレラエクスプレスにも登場するなど、JR東海のフラッグシップトレインとしての役割を果たしてきました。派手な役割もあった割に、最後が静かになってしまったのも、時代を反映しているのではないでしょうか。
個人的に大好きな100系新幹線の事実上後継だったこの700系にはずいぶん嫉妬しましたが、あのカモノハシはどこか憎めないなぁと思っていました。
それでもこの最後の2か月間に、何度も見るチャンス、そして乗車のチャンスがあったのは嬉しかったし、お疲れさまと言いたいと思います。
ありがとう700系。
のぞみを誰もが乗れる新幹線にするという夢を叶えてくれたカモノハシ。